2022年7月2日土曜日

大分合同新聞「学びと言葉~日本語支援の現場から~」

 大分合同新聞の「学びと言葉~日本語支援の現場から~」という掲載をご紹介させてください。

「話せるけど理解難しく~外国ルーツの子、学習言語の壁」(6月29日朝刊掲載)

「授業理解まで長い年月~「すぐ覚える」イメージ 妨げに」(6月30日朝刊掲載)

「進路選択 サポート 課題~国内大学受験 高いハードル~」(7月1日朝刊掲載)

「グローカル人材と共存を~多様な見方を育むチャンス~」(7月2日朝刊掲載)

日本生まれであったり、日本に長く暮らす子どもたちは、「日本語でのおしゃべりが上手(生活言語ができる)」だから大丈夫、と思われることが多いと感じています。おしゃべりができることと、思考を支える言語を育てるのに必要な学習言語ができることは同義ではないということ、そうした見逃されてしまいがちな課題について、子どもたちの声を通して丁寧に伝えてくれている記事だと思います。取り上げてくださった記者の方たちにも感謝するばかりです。

「外国につながる子どもたちの学びを支える体制を教育現場でどうつくっていくか。現状と課題を探る」と書かれてあるように、どのような現状、課題があるかを知り、その解決方法をこのMLでつながるみなさんともそれぞれの立場で考えるきっかけになればと思い、記事を共有いたします。

記事の一部を抜粋いたします。

―児童・生徒への日本語指導はなぜ必要か。

  「彼らは大切な学齢期を日本で過ごす。心身共に成長過程で、思考力を育んでいる段階にある。その力を支え、知識や概念を形成し、世界を広げるために必要なのが言語。日本語教育は子どもの考える力、生きる力を育むためにある」

 「学習言語能力は論理的な考え、物事の抽象的な把握に関わっている。もともと母語が十分でない場合、両言語とも年齢相応のレベルに達しない『ダブルリミテッド』という状態に陥ることもある。既に母語で思考力を身に付けた大人が日本語を学ぶこととは根本的な違いがある」

 ―指導で心がけていること。多文化共生に向けて地域ができることは。

 「出身国で培った経験や知識を生かせるよう、学習の連続性を大切にしている。母語を大切にすることは自己肯定感を育むことにつながると感じている」

 「日本語ができない子どもを『支援の対象』として見るのではなく、地域社会にプラスの影響を与える存在と捉えてもらいたい。それぞれの文化を理解することで多様なものの見方を育むことができる。そうした子が学校に通い地域で育っていくのはすごいこと。彼らは真の『グローカル人材』。共存をチャンスと考えてほしい」

 今回の「学びと言葉」の連載で、改めて、子どもたちは年齢も背景もさまざまで、日本生まれであっても、高校に進学した後であっても、取り組むべき課題があるということを、実際の子どもたちの言葉や様子から知ることができました。そして「外国人児童生徒等教育」の表層的な課題だけでなく、深いところにスポットをあててくださったことで得られた気づきは大きかったです。

こうした「外国人児童生徒等教育」に関する事柄や課題は、子どもたちや親御さん、直接学びに関わる先生たちや学校だけが抱え、解決していくものではなく、社会全体の心持ちが変容していくことが遠回りのようで、なにより大切だと感じています。みなさんは記事を読んでどんなことを考えますか。