2022年6月17日金曜日

第12回ネットワーク会参加のお礼

 第12回ネットワーク会のお礼

大分も梅雨に入りました。雨に濡れるあじさいがきれいです。

水の張られた田んぼからは、毎晩、カエルの大合唱が聞こえています。

さて、6月12日に、第12回ネットワーク会 多言語子育ての「ことば」トークカフェ 〜多言語環境で子育てをしている方の声を聴こう・語り合おう〜 をオンライン開催しました。国内外、県内外から多くのご参加を頂き、大変有意義な時間となりました。ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

今回は、溝部学園短期大学の里中玉佳さん、APU大学のエルヴィタ・ウィアシーさんから多言語子育てについて、それぞれの視点からお話をいただき、その後、グループに分かれてカフェトークを行いました。

里中さんからは、「母親である自分が家の中で中国語を話し続ければ、子どもたち中国語を獲得できると思っていたが、やはり母親一人の努力では難しい。地域や同じような多言語家庭などとのつながりが必要。地域の日本人の子どもたちと外国人の子どもたちがともに学び合う場を作りたいと、母語・継承語教室『中文学園』を立ち上げた」というお話がありました。「『仲間』が必要なんです」という里中さんのことばが印象的でした。

エルヴィタさんからは、「今後、どのように自分のアイデンティティーを教えていくか、日々悩んでいる」というご自身の子育てについてお話をいただきました。インドネシア出身の母(エルヴィタさん)とアメリカ出身の父を持つお子さんは、日本においては「第三文化の子ども(Third Culture Kids)」である。そんなお子さんを「どこに行っても受け入れられる『地球市民』として育てたい」というエルヴィタさんのことばに、参加者の多くが頷いていました。

その後のカフェトークでは、それぞれのグループで意見交換や情報交換があり、また、新しい学びやつながりができました。大阪から参加してくださった方からは、「ミャンマーで日本語を教えていた生徒さん3人が今、里中さんの勤務されている溝部学園で看護を学んでいる」という、うれしいつながりもお聞きすることができました。

私たち「多文化に生きるこどもネットワーク大分」はこれからも、こどもたちが自分や両親の母国、母文化、継承言語…など自分のルーツに興味関心を持ち、誇りに思えるような活動を組んでいきたいと考えています。さまざまな地域、立場にある参加者のみなさまにとって、それらの活動が、よき学びの場、集いの場となりますように。

多文化に生きるこどもネットワーク大分

事務局一同

kodomonet.oita@gmail.com

https://kodomonet-oita.blogspot.com/


【今回の感想の一部を共有します】

・実際に子育てされていらっしゃるみなさんのご家庭でのお話が聞けてとても勉強になりました。

・地域によって、親の背景によって、いろいろな支援が必要だと再認識しました。

・色んな立場の方の意見、日本で多言語教育をされてる方のお話が聞けて、とても励みになりました。

・母語を継承していくことは家庭内だけでの努力にゆだねるのではなく、ホスト社会に暮らす人たちの意識の変容や、制度的なサポートが求められていると感じました。

・多言語で子育てをしようにも、置かれた環境(学校、地域など)の理解、サポートの在り方など、親がコントロールできない部分があり、でもそうした制約こそが、親子関係という私的な関係の悩みとして影響してくることがお二人のお話から伝わりました。

・発表はとても心強かったです。考え方・言葉にとても感動して、こういう日本人がいるのを分かることできたのは感謝いっぱいです。

・今まで、全部自分の責任に思っていたし、日本政府が多様性をあまり評価しない、認めない、支援しないイメージがつよくて、それにもかかわらず、ボランティア・小学の先生のなかに、こういう考え方を持って、認めてくれて、味方になってくれそうな方がいるのを初めてかんじました。とても感動して、ちょっと希望が出ました。心からありがとうございます。

・カフェトークの時間はとても貴重な時間でした。登壇者のスピーチ時間があと5分延長できればいいのにな、とも感じました。

・主催者の皆様が安心できる雰囲気作りをしてくださったからこそ、当事者の皆様が個人的な色ストーリーを共有してくださったんだろうな、と実感しました。

 ・玉佳さん ・自分の母語を習得してほしいという強い気持ちと行動力の重要性。散在地域での母語・継承語教室の立ち上げで、中国にルーツを持つ子どもだけでなく、地域の子供達も一緒に参加できる仕組みに。

・ カタルーニャ出身女性 ・仕事をしながら家庭で母語・継承語教育をすることが難しい。 また、カタルーニャ言語が少数言語であるため、外で子供が学習できる機会が皆無に等しい。 ⇒家庭で母語・継承語教育をしたくてもリソース、時間、余力がなくてできない人がいる現状。 ⇒夫日本人+自身が日本語が話せるから、家庭では母語教育をしなくても子供と通じ合える現状。 ⇒少数言語の学習や文化に触れられる機会の重要性。

・エルヴィダさん ・考え抜いた上で、インドネシア語を家庭で教えないことを選択。日本社会で生きていく上で日本語が重要。学校でいじめに遭わないように、受験に対応できるようにという想いから日本語教育に力を入れている。 ⇒保護者の家庭での言語選択を尊重することの大切さ。 ⇒日本社会側が言語・文化的多様性にもっと寛容で柔軟な環境を整えられたら、他の言語選択もあったかもしれない。

 ・今回のような当事者や支援者など色々な立場の人が、多文化・言語環境での子育てについて語れる機会の重要性を再認識しました。また、このような機会を提供していただけたら嬉しいです!

・外国にルーツを持つ子の保護者の方の率直なお話をお聞きする貴重な時間でした。

・貴重なお二人の体験談(ご苦労や切り拓いていく楽しさ、生きて行くパワー等)を聞くことができ、身近な問題として捉えることができました。

・お二人のお話をお聞きするまでは、多文化家庭の子供さんは自然にバイリンガルやトリリンガルになれてうらやましいと思っていましたが、家庭での言語をどうするかという親の話し合いが不可欠で、その親のポリシーを子どもにきちんと伝えておかなければ、両親の母語や文化を子どもに伝えていくのは難しいことなのだとわかりました。

・両親の出身国と日本との関係が良ければ、両親の母語を使うことに抵抗はないと思うが、関係があまりよくなければ、それを使わず、隠そうとすることなど、多文化に生きる子どもたちはそれだけでも気を使いながら、日本社会で生きているのだと、改めて痛感しました。

・今日のお話を、今後日本語を指導する上でも、子どもたちに寄り添い、役立てていきたいと思いました。

・お子さんの言葉(母語)について、気持ちが揺れているお母さんや、あきらめているまたは、母語を封印しているお母さんも多いと思われますが、そんな方たちへの啓発にもなり、また、日本人側の意識への働きかけにもなったと思います。それでも必ずしも思うようになっていないということは、当事者の親子の問題ではなく、周りの責任だということを改めて思いました。

・学校がこどもたち、一人一人の寄り添える仕組みにしたいと思いました。

・時代が進み、母親がフルタイムで働くことが当たり前になった今、家と社会生活(保育園)で異なる言語を駆使する子どもたちが、混乱することなく母語と滞在国の言葉を習得できるよう何かできることを探したいと思いました。子どもたちは無意識に前に進みますが、お母さんには適時適切なフォローが必要ですね。 

・私たちも、母語の問題には、大きな関心を持っています。子どもたちが自分らしく力を伸ばしていくために、母語の受容は大切なことだと思います。日本社会、特に学校では、日本語指導に偏らない教育環境を作ってほしいです。しかし、子どもの支援というと日本語云々に終始している傾向は強いように思います。私たちの責任を感じています。

・microagressions: How to cope, how to respond, how to ‘educate’ the microaggressors 今回出てきた話題や論点のいくつかを選んでスピンオフ的に掘り下げていけたらいいですね。

・言語や文化の継承が不十分な子どもに対して、学校や地域・行政はどのように支援ができるか。