2020年10月4日日曜日

わたしの取り組み紹介リレー「温泉文化が育む多文化共生」べぷはち Beppu Rainbow Society 神 智子

9月のオンラインネットワーク会で発表していただいた神智子さんが、参加できなかった方のために活動報告をしてくださいました。多文化共生社会を願う方々の活動から多くのことを学ばせていただけます。ぜひ、ご一読ください。神さん、ご報告ありがとうございます!

「温泉文化が育む多文化共生」

まず初めに、私が今の活動に携わるきっかけとなった団体、SOSとの出逢いについてお話しさせてください。

SOSは、外国人観光客をお迎えするボランティア団体として1986年に設立されました。今でこそ別府は多くの外国人観光客をお迎えしていますが、当時は一日に一組立ち寄るかどうかという状況でした。そのような中でも、一人でも困っている方の力になりたいと根気強く待ち、お客様を大切にお迎えした愛溢れるおもてなしの先駆者です。私は、約20年前にこの活動を市報で目にし、お手伝いさせて頂くようになりました。

ところで、皆さんは、温泉にはどのくらい入られますか?私は毎日入っています。私の子どもたちも毎日近所の温泉に入り、躾もここでなされてきました。湯舟の中では、どちら様であろうと関係ない。誰もが町のおじいちゃんやおばあちゃんから作法を学ぶ場。嫌なことがあったり、喧嘩をしても、互いに背中を流し合い、湯に流す。そんな文化がここにはあります。大地の恵みを分け合う文化。湯舟の中ではボーダーレスな社会が存在するのです。そして、困っている人を見ると放っておけない。SOSは、正にそんな温泉文化から生まれたものだと思います。

後に立ち上げた、べぷはちBeppu Rainbow Societyの名前にも、そんな思いがつまっています。“べぷ”は、“別府”。“はち”には、“七色の虹の上に、もう一色“という意味が込められています。そして、虹”Rainbow”には、英語で多文化共生という意味があるそうです。

その後、2006年より、縁あって別府市国際交流室に勤務するようになり、私にも、別府に暮らす多くの外国にルーツをもつ方々のために何かできないか?と考えるようになりました。

そこで、最初に取り組んだのは日本語教室でした。日本語教室と言っても、ただ日本語を教えるというものではなく、日本の文化を体験してもらえるように工夫しました。例えば、お正月にはカルタ取りや福笑い、二月には節分の豆まき、三月には雛人形作り、四月はお花見、七月は七夕等々、四季折々の行事を通して言葉を学んでもらえるような場を作るよう努めました。それは、当時は多くの大学院生が家族を連れて来日しており、日本語の知識がないまま連れてこられた子どもたちに、何か楽しい遊びを通じて学んでもらえないかと考えたからです。

その後、食を通じて理解を深めてもらえるよう、地元の方々にお手伝い頂き、料理教室を開催しました。イスラム教にも配慮し、お酒はもちろん、アルコールを含んだ醤油やみりんも使えなかったため試行錯誤しましたが、一般的に宗教観の薄い私たちにとっては、多文化を理解する上でとても良い勉強となりました。

教わるだけでなく、自分たちの国のことも知ってもらいたいという留学生からの提案で、国際理解教室も開催するようになりました。その中でも記憶に強く残っているのは、「リベリア」の学生さんの母国紹介です。その学生さんは内戦でお父様を失い、家族とも離れ離れになり、何年も難民キャンプで暮らすことを余儀なくされました。それでも、そのキャンプで多くの人々を支援し、その噂がキャンプからキャンプへと伝わり、ついには家族との再会を果たせたそうです。彼の通ってきた道を思うと、それは想像もつかないほど辛く苦しいことだったに違いないのに、それでも、子どもたちに、今、ここで何事もなく暮らせていることの幸せ、世界の現状を伝えようと何度も市内の中学校で講演をしてくれました。その時の彼の気持ちを思うと、今でも涙が込みあげてきます。

文化紹介では、ベトナムの学生さんたちが頑張ってくれました。ベトナムの学生さんは地域交流にとても熱心で、特に子どもたちにベトナムの文化を教えたいと様々な教室を開いてくれました。例えば、竹とんぼ作り。日本の竹とんぼとは違い、そのくちばしをペン先などに置くとバランスをとって止まる、バランスとんぼです。我が家では、掛け時計の上に止まっていますが、実は、熊本大分地震の際、食器棚から全てのお皿が落ちて割れてしまった時にも、なんと、このとんぼは落ちませんでした!

さて、その熊本大分地震について、少しお話しさせてください。地震直後、多くの市民、観光客が公民館に避難していました。特に別府アリーナには300人以上の外国人観光客や留学生が避難しているとの連絡を受け、私もそこに向かいました。このような大きな地震は、私たち地元民でも体験したことがないものでしたので、何をどうして良いのか分からず右往左往していると、タイの学生さんがキビキビとタイからの観光客のケアをしている姿が目に入りました。異国で、きっと自分自身も不安なはずなのに、支援の側に回ってくれようとする学生さんがいたこと。感謝の気持ちが溢れました。比較的地震に慣れているはずの私たちでさえ怖いのに、日本語がわからない人たちの不安は計り知れません。中には国に帰りたいと泣き出す人もいました。そこで、地震直後に災害時通訳ボランティア(BIAD)を募り、今は100名以上の登録を頂いています。そして、この内の3分の1は留学生です。以来、年二回程度、別府市やAPUと共同で、防災ワークショップを開催しています。今年はコロナ禍で、オンラインでの開催となります。11月7日(土)14:00-16:00を予定していますので、ご参加頂けましたら幸いです。詳細が決まり次第、ご連絡させて頂きます。

最後にお話しさせて頂くのが、地球っ子わくわく広場です。月二回程度、土曜日にAPUプラザにて開催しています。この広場では、遊びを通じて子供達の居場所づくり、仲間づくりを目指しています。また、子育て中の外国出身のパパ・ママたちの情報交換の場になったり、学校の課題やプリントの文章読み解き等サポートする場になればと思っています。全ての子どもたちが、自分の生まれた国や両親の国に誇りを持つことができ、生き生きとした生活を送れる環境を作りたい。そんな思いで仲間とともに活動しています。

10月10日(土)14:30-15:30には、オンライン運動会を予定していますので、こちらもお知り合いの子どもたちにご案内頂けましたら幸いです。参加希望の方にはミーティングIDなどお知らせさせて頂きます。

最後になりましたが、多文化に生きるこどもネットワーク大分の皆さま、このような取り組み紹介の場を設けてくださり、有難うございました。それぞれの現場でご活躍されている皆さま方と、こうして手をつなぎながら前に進むことが出来ますことを、本当に心強く思っております。どうぞこれからも、ご指導宜しくお願い致します。